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ジャムをつくる、おにいちゃんは、いつも優しい顔をしていた 「おにいちゃん、ジャムつくるの?」 「そうだよ、苺、とってきてくれる?」 「わかった!」 かごいっぱいに集めた苺を、じっくりと煮詰めていく その時間は私たちにとって、とても大切なものだった 木でできた踏み台にのぼって、苺の様子をみながら、いろんな話をする 友達のこと、学校のこと、悩んでること、悲しかったこと、 おにいちゃんは、どんなことを話しても、まあるく受け止めてくれた だから私は、2人きりで寂しいとも、この家を出たいとも思ったことはない 「ただいま~」 「おかえり。」 今日も、この家は、甘く優しい匂いに包まれている あの頃は、踏み台にのぼらないと同じ目線になれなかったけど、 今は少しだけ、おにいちゃんに近づけている、といいな。
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