あかいろデイズ

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 と、ごめん。また話が逸れちゃったんだけども。  僕とななこちゃんが育った小学校は……まあ、いわゆる田舎っていう奴だったんだよね。コンビニなんか近くにないし、学校までは遠いし、帰り道もぬかるんだ田んぼの横や沼の横なんてのもあって、危ないところがたくさんあるんだ。  それでも昔より、ぽつぽつと街灯は立つようになったんだけど……この学校の近くと比べれば格段に暗くて視界が悪い場所が多かった、とだけ言っておくことにするよ。  気味が悪いなあ、とは思いつつ。僕はずっと、どうして彼女が赤い色ばかりを好んで、それ以外で絵を塗ろうとしないのか不思議で仕方なかったんだ。よくよく思い出してみれば、彼女は下書きさえも赤い色鉛筆でやりたがったんだよね。普通の鉛筆の方が、ずっと消しやすいはずなのに。  僕と彼女は、途中まで同じ道で帰ることが多かった。偶然家の方向が近かったからってだけで、仲が良かったわけでもなければお話をすることも殆どなかったんだけど。  その時何を思ったのか、僕はずっと疑問に思っていたことを彼女に尋ねていたんだよね。そこはいつも通る、沼の横の道だった。危険、入るな!ってサビだらけの看板が立っているようなところ。柵もない。まあ、入るな!って書いてあるような場所に入るほど僕も馬鹿じゃなかったけれど、時々土手をずり落ちて沼にハマっては叱られている悪ガキがいたことはよーく覚えてるよ。 『お前、どうして赤ばっかり使うんだ?空も森も人も赤くないのに、赤で塗ったら変だろ』  子供っていうのはこう……ね。ストレートというか、特に男の子ってのはなかなか遠まわしの配慮ができないもんでね。  すると、ずっと虐められて耐え兼ねていた彼女は……その言葉に怒り出したんだ。 『赤が好きで、赤で塗ったらどうしていけないの!?私、血が好きなんじゃないもん!赤が好きなだけだもん!赤が、赤だけが一番きれいだから好きだけなのに、どうして小倉君もみんなも意地悪ばっかり!みんな嫌い、だいっきらい!!』  そのまま彼女は走って、来た道を戻っていってしまった。というか、多分僕と一緒にいたくないから、とにかく他の道で帰ろうと思っただけなんだろうね。  なんだよあいつ、って思った。僕は別に、他の子みたいに“血が好きなんだろ”とか“気持ち悪い”なんて言ってないのに……ってね。変だ、って言った時点で彼女にとっては十分ひどかったわけなんだけど、その理由がさっぱり想像できなかったんだよなあ。  真実を知ったのは、家に帰ってしばらくしてからのこと。  ななこちゃんが、まだ帰ってきていないって、親御さんから連絡があったんだよね。どこかで見かけていないかって。まだいなくなって数時間ではあったけれど、この近辺は街灯も少なくて本当に真っ暗になるし……ななこちゃんのお母さんがあんなにも心配するのには、他にも理由があったんだよ。
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