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「かげとー、あれ?かげとは?さっきまでココにいた気がするんだけど・・・ お前ら知らね?」 「知らないよ。かげといないなら帰るよ、あたしら。じゃーねー。」 「ちょっ・・・どこ行ったんだよー、かげとのやつ。」 今日も呼ばれている葛西くんの名前。 あっ、時間だ。美術室行こう。 ガラガラ 美術室に入ると風に包まれた。 カーテンが静まるとそこには真剣に絵を描く1人の生徒。 僕はすぐにわかった。 綺麗な茶髪が光に照らされてる。このイケメンは・・・間違うはずない。葛西くんだ。 僕が入ってきたことには気が付いていないみたいだ。 葛西くんが描いていたのは、人物画。 まるで写真のような、躍動感と繊細さが伝わってくる。 「すごい・・・」 近い距離で絵を見て、自然と言葉があふれた。 「おぉ!びっくりした。普通に声かけてよ。」 葛西くんは少し椅子から落ちそうになりながら僕の方に振り向いた。 「ごめんなさい!すごく綺麗な絵だったから、見とれてた・・・。」 筆先が絵から離れている時で良かったと思いながら、話を続ける。 「そーか?ありがと。 お前、美術部でうちのクラスの佐丸陽太だろ?」 「え?」 僕はびっくりして口が開いたままになっていた。 「あれ?ちがった?」 「ううん。合ってる。 いや、まさか葛西くんが僕のコト、知ってくれてるなんて思ってなかったから。」 思ったことを素直に話した。 「なんで?」 すぐ質問で返された。 「えっ、だって僕、地味だし、あまり喋らないし、メガネだし・・・」 笑いながら葛西くんは「そっか」って言った。 「でも、メガネは関係なくね?」 ほらね。僕はやっぱり地味なんだ。 「でもさ。陽太はいつも美術室で、絵描いてるだろ?周りが見えないくらい真剣でさ、その姿が綺麗で。だから覚えたんだ。」 「今・・・陽太って。」 「あれ?そこ?今、誉めたつもりなんだけど・・・ 名前呼んだの、なれなれしくて嫌だった?」 「えっ、いや、その・・・初めてなんだ。名前呼ばれるの・・・だから、ちょっと、嬉しくて・・・」 赤面しながら言葉を並べた。 「そっか。じゃあこれからもたくさん呼ぶね!」 葛西くんは楽しそうに声を弾ませる。 「これからも、喋ってくれるの?こんな僕と。」 なぜか不安が押し寄せた僕は確認した。こんな感じは初めてだ。 「あたり前。今から俺らは友達。ね?よろしく、陽太。」 「うん。よろしく、葛西くん。」 僕は照れながらも真っ直ぐ彼の目を見た。 友達・・・。嬉しい。 「陽太も俺のコト影斗って呼んで。」 「えっ・・・いいの?」 「うん!早く!」 ワクワクした子供のような声。 「か・・・影斗」 「なーに?」 勇気を出して呼んだら、彼はのん気に返事して僕の顔をのぞき込む。 「顔、真っ赤だよ。」 「言わないで・・・。」 自分でもはっきりわかるくらい顔が熱かった。 「ふっ。じゃあまたね陽太!」 元気に手を振って去って行く影斗。
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