猫を拾った

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猫を拾った

――ねこをひろった  日記の最初のページに僕はそう記した。久しぶりに日記を書くのが楽しいと思えた。  その時僕は小学三年生。  いじめられっ子だった。  昨年まではクラスの人気者で毎日学校に行くのが楽しみだった。それがいつしかクラス中から無視されるようないじめられっ子になっていたのだ。理由は今でもよくわからない。お調子者だったのは確かだから、何気なく言った言葉に腹を立てたヤツがいたのかもしれない。あるいはいじめ自体が単なるゲームのようなものだったのかもしれない。  子供というのは実に残酷であり容赦がない。一度いじめられっ子のレッテルを貼られると、今まで一緒に遊んでいた連中が目も合わせようとしなくなる。  やっぱり一人は寂しくて、少しでも仲良くしてもらおうと勇気を振り絞って自分から声をかけたこともあった。大人しくて優しい感じのクラスメイト。居残りして算数の宿題をやっていたその男の子に、教えてあげようか?と言ってみた。するととても困ったような顔をして、 「ごめん、いいよ」  と言って去っていった。  休み時間になるとみんなグラウンドで楽しそうに遊んでいる。僕は教室でひとり、漢字ドリルをやっていた。  親には言えなかった。家では出来る限り明るく振舞った。仕事の忙しい両親に心配をかけたくなかったから。  そんな時、猫を拾ったんだ。  それは家族三人で近所のファミレスに行った帰り道のこと。最初に気付いたのは父さんだった。不自然に道端に置かれた段ボール箱。開けてみると子猫がいた。 「ひどいことをするヤツがいるな……かわいそうに……」  動物好きの父はしゃがみこんで何やら(つぶや)きながら、悲しそうに段ボール箱の中を見つめている。僕もおそるおそる箱をのぞく。薄汚れた灰色の子猫がもそもそと動いているのが見えた。そっと手を触れてみる。あたたかい。 「父さん、母さん、生きてるよ!」  衰弱した子猫を見て、これまた動物好きな母は迷うことなく言った。 「すぐ病院に連れていきましょう。まだ診察時間に間に合うわ」  獣医さんに連れて行くと、そいつは全身ノミだらけなのがわかった。診察台の上でフラフラしていた。 「助かるかどうかわかりませんが最善を尽くします」  先生はそう言うと子猫を預かってくれた。
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