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鳴神刑事と透が顔を見合わせる。それも一瞬で、鳴神刑事が一歩前へ出た。
「今回の事件の重要参考人である、大槻真琴が死亡しました」
「脊髄損傷によるショック症状が死因だが、どうやらそれだけではなさそうで解剖に回されることになりそうだ」
二人はそれぞれ八雲にそう告げた。
座り直しながら、八雲は二人の言葉を反芻して考える。
彼の死は、予定調和だったのかもしれない。
「では、今日は解散しましょう。捜査上、わかったことがあればまた追ってお伝えしますから」
鳴神刑事がそう言って締めると、李菜を送っていくため彼女と一緒に部屋を出た。
有栖川医師と澪も席を外れる。
部屋に残っているのは八雲、透、花怜の三人になった。
「透、花怜。私、この事件の黒幕を追ってみたいんです。きっと、その先に姉さんの手がかりがあるから。無茶はしませんし、相談もしますから……」
お目付け役もとい、助手的な立場の二人に頼む。二人の協力も必要なのだ。
花怜と透は顔を見合わせた。そして、頷き合うと八雲に向き直る。
「体調管理に気を付けるなら、俺から言うことはないぞ」
透の目は『食事をちゃんととるように』と語っている。
「私は先生に救われた身ですから。サポートは任せてください。ついていきます!」
花怜もやる気十分な表情でそう答えた。
反対されるとは考えていなかった八雲だが、透と花怜の二人から協力を得られることになりひと安心したようだ。
そのまま三人で部屋を出ると、有栖川一家に挨拶をして、八雲は花怜と一緒に帰宅する。
雪の四月一日、一人の少女の死から始まった事件は静かに幕を閉じた。
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