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暖房の効いた車の中に入ると、鳴神刑事から二人に温かい缶コーヒーが手渡された。
正確には、八雲はミルクティー、透は微糖のコーヒーと、それぞれ好みに合わせたホットドリンクが渡されている。
「今、近隣の高等学校に卒業したばかりの女子生徒で連絡がつかない子が居ないかを問い合わせています」
鳴神刑事は、八雲の意見を取り入れ、迅速に動いてくれているようだった。
遺体周辺からも女性の身分を証明できるものは見つかっていないため、特徴を公開して情報を募るのだろう。
ミルクティーの缶を手の中で弄びながら、八雲は複雑そうな顔をしている。
「どうしたんだ?」
そんな八雲に声をかけたのは透だった。
彼女は考えながらも口を開く。
「わかりません。けれど、何か違和感が……」
そう呟いたとき、車の窓ガラスが叩かれた。
同僚の刑事の姿を確認し、鳴神刑事がドアを開けて外に出る。まだ雪は降り続いていた。
八雲はやっとプルタブを開け、ぬるくなったミルクティーを喉に流し込んだ。
「ああ、もう! 気持ち悪いっ……」
ぼそりと呟いた言葉は、遺体を見たことに対してでもフラッシュバックで見たことに対してでもない。
八雲は犯人の思考が理解できなくて気分を害しているのだ。
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