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「まったく、なんてことを言うんですかあなたは!あまりにも無礼ですよ!」
「俺が悪いと言いたいのか!?あれを初対面で王女だと信じろと!?」
ツィニカに引きずられるように退室したノルトは、階下の使用人部屋でお叱りを受けていた。
「確かに説明が足りなかったのは否定できませんが、そもそも話を聞かずに先走ったのはあなたです!サナリア様が礼儀に構わないへんじ……変わった方でなければ罰を受けてもおかしくありませんよ!」
「その割にはあんたも随分好き勝手言ってるみたいだが」
「そ、それは信頼関係があってのことです!一緒にしないでください!」
どうやらこの侍女にも王女に対して思うところがあるようだ。
「王女だとわからなかったにしても、初対面の令嬢によくもあんなに失礼なことをまくし立てられたものです!」
「だが事実だろう?とても上流階級の振る舞いには見えなかった。俺は細かいことが気になるたちでな、気づいたことは言わずにおれん」
「……まったく、頭が痛くなってきましたよぅ」
ツィニカはふらふらと椅子に座り込む。しかし、文句を言いたいのはノルトだって同じだ。
「……そこの棚、建付けが悪くなっているな。椅子も歪んでいる。危ないぞ」
「へ?あ、本当ですね……」
部屋に入った時からずっと気になって仕方なかったことを指摘すると、ツィニカは初めて気が付いたような顔で驚いている。
「……調度類は俺が整備したほうがよさそうだな。他に何をすればいい?」
「えっと、前の筆頭さんは料理が得意な方だったので私はその他の洗濯や買い出しなどを受け持っていました」
「では引き続き頼む。料理は俺が、掃除と来客の対応は二人で分担しよう。とりあえず屋敷の案内をしてもらってもいいか?」
「この屋敷にいらっしゃる方は本当に限られていますけどね。では、まず最初にノルトさんに泊まっていただく部屋にご案内しますね」
ノルトは小さな旅行鞄を持ち、ツィニカについていく。やはり、王女の部屋に続くところ以外はどことなく煤けていたり汚れていたりが目立つ。これはかなりの根気が必要だと思いながらノルトはため息をついた。
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