未来への招待状

9/34
前へ
/86ページ
次へ
 まあ、それ以前に、そこに二人で住むとなれば同棲ということになる。遼二も紫月も、両親との約束である二千万円すら貯まっていない内から同棲というのも気が引けるわけだろう。二人は何ともいえない複雑な表情で互いを見つめ合っていた。 「何だ、例の二千万の約束を気にしているのか? だったら心配ない。お前らの口座に一千万ずつ振り込んでおいた。二人合わせて二千万円はクリアだ。それに――お前らの両親には既に了解を得てある」 「ええッ――!?」  またしても若い二人は素っ頓狂な大声を上げてしまった。 「何――、その方が便利だし、何より安心だろ? 引き受けてもらえないか?」  氷川にしてみれば、今回大事に至らずに冰を救出できたのは、この遼二と紫月の助力の賜物と心から恩義に感じていた。  的確な情報収集と判断で、迅速に行動してくれた遼二。そして紫月に至っては冰を呼び出す為の道具として使われた上に、とんでもなく嫌な思いをさせてしまった。にも係わらず、紫月は現場の状況を伝えようと、身体の不調をおして尽力してくれた。  そんな二人に対する詫びと恩を、どうにかして形にしたい、そう思ったのだ。それに、この若い二人は自分たちと同じように同性同士で愛し合っている。様々な苦難を懸命に乗り越えようと努力している。そんな姿が愛しくも思えて、氷川は彼らを家族のように思っていたのだった。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

973人が本棚に入れています
本棚に追加