未来への招待状

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 バルコニーの扉を開ければ、中庭が望める。手入れの行き届いた芝の絨毯に月明かりが差し込んでいる。周囲には木々が涼風を受けて、葉音が心地好かった。  隣の部屋には遼二と紫月、そのまたひとつ隣に帝斗が泊っている。遼二らもバルコニーの扉を開けているのか、時折楽しげな笑い声が聞こえてきていた。二人でじゃれ合ってでもいるのだろうか、普段はあまりはしゃいでいるところなどは見たことがない紫月の朗らかな笑い声に、冰はホッと胸を撫で下ろす心持ちでいた。  結果的には未遂だったとはいえ、高瀬に拉致され、服を破かれ拘束されたりと、紫月には本当に気の毒な思いをさせてしまった。皆の前では平静を装ってはいても、本当は傷付いていたりしやしないか、気持ちの奥底ではトラウマになったりしていないかと気になっていたのだ。  紫月には勿論のこと、遼二にもどれ程心配を掛けただろう。彼らの気持ちを想像すると、申し訳なさが募ると共に、これからは二度とこんなことが起こらないように細心の注意を払っていかなければと、気持ちの引き締まる思いだった。  そんな彼らも転居の提案を快く受け入れてくれた。冰は今回の恩をしっかりと胸に刻むと共に、これから始まる新しい生活が彼らにとって幸多いものとなるよう、自分にできることを精一杯やっていこうと心に誓うのだった。そして、静かに扉を閉めると、ひとつだけ気に掛かっていたことを氷川へと投げ掛けた。
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