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「な、龍――あのさ」
「ん?」
「遼二と紫月のことなんだけど……。その、これから彼らと隣同士で暮らすに当たって……話しておいた方がいいのかなとも思うんだけど……どうだろうか」
少々遠慮がちの冰の問い掛けに、氷川は一瞬不思議そうに彼を見やった。――が、すぐにその言わんとしていることが分かったのか、クスッと軽快な笑みを浮かべてみせた。
ショットグラスに注がれたバーボンのロックを一口含みながら、言う。
「俺の家のことか?」
「あ、うん。別に言わなくていいことなのかも知れないけど……今までは他の皆と同じように、ただスタッフとして勤めてくれていたわけだからいいとして……。これからはもっと近しい関係になるわけだろう? だから、ちょっとそんなふうに思ったんだ」
冰の言いたいことはよく分かった。氷川の家はマフィアである。自分たちにとっては特別なことではなくても、世間一般的に考えれば、マフィアと聞けば驚くと思うわけだろう。同じフロアの隣の部屋で、ほぼ一緒に住むような感覚になるわけだから、最初に話しておいた方がよくはないか――氷川にはそんな冰の気持ちが手に取るようだった。
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