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バーボンを卓上へと置くと、窓辺に立つ冰の隣へと歩を進める。氷川はそっと彼の肩に腕を回し、抱き寄せながら言った。
「そのことなら心配はいらねえ。あの二人は既に知っている」
「え……!? もしかしてお前が打ち明けたのか?」
氷川はこのひと月の間、ずっと遼二を側付きとしていたわけだから、彼と過ごす時間も多かったわけである。その間にそういった話が出て、打ち明けたのかと思ったのだ。
だが、実際は違った。
「俺は言ってねえがな。でも奴らは知っている。俺の親父が香港マフィアの頭領の周隼だということも――。それを証拠に、ヤツはお前を救い出す際に俺を引き留めた」
「引き留めた……?」
「――俺が拳銃を使わんとしていることを見抜いていたんだろう」
「……拳銃って……龍、まさか……」
「事務所のドアをぶち破って踏み込んだ直後、高瀬が起爆スイッチを押す前に仕留めるつもりでいた。無論、スイッチをヤツの手から取り上げられればいい。多少の怪我を負わせたとて仕方ねえ――くらいのつもりだったがな。遼二は俺がヤツを殺っちまうかも知れねえと危惧したのかもな」
「……そんな……!」
だとすれば、遼二は本当に氷川の素性を知っているのかも知れないと思えた。
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