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「……じゃあ……遼二らに教えたのは、もしかしてミカドさんか?」
氷川自身が言っていないのなら、事情を知っているのは元オーナーの帝斗だけだ。無論、冰も打ち明けてはいないし、他には思い当たらない。
不思議そうに首を傾げる冰の横で、氷川はまたも面白そうな笑みを浮かべてみせた。
「お前は覚えてねえか? あの二人が初めて店に面接に来た時のことだ。俺があいつらに向かってトランプのカードを投げ付けたことがあったろう?」
「あ、ああ……! 勿論覚えてるよ。あの時はビックリしたぜ。いきなりあんなことするんだから……どうしちまったのかと思って……」
そう――、氷川は遼二らが面接に来た際に、突如彼らに向かって卓上にあったトランプのカードを投げ付けるという暴挙に出たのだ。
ちょうどその面接の直前まで、店のホストたちが客受けするテクニックの練習だと言ってトランプを使っていたので、机の上にはカードが散らばっていた。これ好都合と、その中の一枚を取り上げて、氷川は彼らに向かって勢いよくそれを飛ばしてみせたのだった。
突然の奇行に、冰は何をいきなり乱暴な――という顔をして驚いたのだが、もっと驚かされたことには、遼二がそのカードを真剣白刃取りのようにして二本の指でキャッチしたということの方だった。
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