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「あいつらを一目見て思ったんだ。特に遼二の方だ。ヤツは俺の知り合いによくよく似た顔立ちをしていた。その直後にあいつが”鐘崎遼二”と名乗ったんで、もしかしてと思ったんだ」
「知り合い? ……って、どんな?」
「仕事上の知り合いだ。俺の親父――つまりはファミリーとも繋がりのある人物だ」
ということは裏社会と関係があるということになる。遼二がその知り合いに似ているとは、一体どういったことだろうか。冰はしばし首を傾げさせられてしまった。
そんな様子に苦笑気味ながら氷川は続けた。
「その人物の名は鐘崎僚一といってな。この日本で――いや、アジア圏でと言った方がいいか――俺たち同業者の中では彼の名を知らない者はいないというくらいのキレ者だ」
「鐘崎……!? 同業者って……! じゃあ、遼二は……その鐘崎僚一っていう人の……」
「倅だ。まさかうちの店に転がり込んでくるなんて思いもしなかったが、遼二があまりにも僚一にそっくりなんで、俺はヤツにカマを掛けてみようと思ってな」
それで例のトランプを投げ付けるという奇行に出たわけか――。
「案の定、ヤツはいとも簡単に反応してトランプを掴み取った。その直後に俺がヤツに何か体術を心得ているだろうと訊いた時の反応もな。ヤツは謙遜して空手と拳法を少しだけかじっているなんて抜かしやがったが、あの時のヤツの目を見て確信したんだ。あれは裏の社会で育った人間の目だった」
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