未来への招待状

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「……そんな! じゃ、じゃあ紫月もそのことを……勿論知っているわけ……だよな?」 「ああ。紫月は遼二の父親――鐘崎僚一の相棒として活動を共にしている一之宮飛燕(いちのみやひえん)という男の(せがれ)だ」 「相棒って……それじゃ、遼二と紫月の親御さんは……揃って裏社会の人だってことなのか?」 「そういうことになるな。まあ、彼らはアウトサイダーだが」 「ア……ウトサイダー?」 「組織や団体に所属しているといったふうではねえってことだ」 「え……、じゃあ、組長……とかじゃないってこと?」  日本で裏社会といえば、組とか会とかいった方向に思考がいくのだろう。冰のキョトンとしながら首を傾げる様子が何とも言えずに可愛らしく思えたわけか、氷川はふいと瞳を細めてしまった。 「例えば面子(めんつ)なんぞの関係で表向きは手が出せねえような案件を、依頼者に代わって遂行するような仕事をしてる。俺たちファミリーのような組織と組むこともあれば、政府や要人なぞ、依頼者は多岐に渡る。僚一は、その右に出る者はいねえってくらいの情報網を持っていてな。体術にもズバ抜けているし、主には実行部隊だが、紫月の父親の飛燕の方はコンピューター関連のプロだ。僚飛(りょうひ)のコンビといったら俺たちの業界じゃ神格的ってもんだ」  まあ、氷川は彼らが鐘崎、一之宮と名乗った時点でほぼ確信を得ていたようだが、そうであるならば尚更試してみたいと遊び心が疼いてしまったようだ。
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