未来への招待状

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「確かに少し気が緩んでいたな。お前と想いを通じ合うことが叶って、一緒にも暮らせて――その上、遼二と紫月との縁もあって、俺は浮かれていた。これからは気を引き締めなきゃならねえって、改めて思い知ったよ」 「……そんな……! それを言うなら俺も同じだ。いつもお前に守られて……甘やかされて、俺も気が緩んでた。今回のことはいい教訓として、今後に生かしていけるようがんばるよ」 「――冰、お前ってヤツは……」  氷川はクッと眉をひそめると、堪らないといったふうに真正面から冰を抱き締めた。強く強く腕の中へと抱き包み、あふれる愛しさのままに頬摺りを繰り返す。 「甘やかされてんのは俺の方だ――」  額に唇を押し当てながらこぼれたその声が、甘苦しげに震えていた。 「羽田に着くまでの飛行機の中で――自分を失くしちまうんじゃねえかってくらいに時間が長かった……。今すぐお前の元に行ってやりたくても叶わねえ。その間、お前に何かあったらと嫌な想像ばかりが浮かんでは否定して――気が違いそうだったぜ……」
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