未来への招待状

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 おいそれとは手の届かない、側に行きたくても叶わない――高瀬に拘束されたあの夜、羽田へ向かう機内で氷川がどんな気持ちだったのかが手に取るようだった。きっと酷い焦燥感に身を裂かれる思いでいたのだろうことも重々理解できた。  つい今しがたも、俺を掴んで放すなと叫んだこの氷川の心中が痛い程伝わってきて、冰はあふれ出る涙を愛しい男の頬に擦り付けながらしがみついた。 「龍……龍……、俺さ……高瀬に、あの男に爆弾で吹っ飛ばされちまうんじゃねえかって思ったらさ……ンなのぜってー嫌だって思って……。今は……例えあいつに踏みにじられてもいい、もう一度お前に会うまでは……どんな手を使ってでも生き延びてやるって……」 「……冰……」 「けど……けどさ、俺の魂は――! 心だけはお前のもんだって……! この世の誰のでもねえ! お前だけのもんだって……何度も……何度もそう誓って……お前だったら分かってくれるって……お前に会うまではぜってえ諦めねえって……何度も俺……」 「――ッ! 冰……っ!」  涙まじりで吐き出される言葉のすべてを抱き締め、握り潰してしまわん勢いで氷川は冰を抱き締めた。  たった独り、誰の助けも望めない諦めと恐怖のどん底の中――冰がどのように自分を励まし、闘っていたのかが目に浮かぶようだった。  例え穢されたとて、必ず生きてこの手の中へ戻る――だから信じて待っていて欲しい、闘い抜いた俺を拒まないで欲しい、そんな思いだったのだろうか。最悪の状況下にあっても自分を失わず、必死に切り抜けようとした冰の気持ちが伝わってくる。そして、彼にそんな勇気を与えたのは、魂と魂とが繋がっていると固く信じてやまなかった愛の力なのだということも、痛い程伝わってきた。 「冰……ッ! 冰……」  氷川は何も言葉にできぬまま――必死で冰を抱き締めた。涙にくぐもる嗚咽を抑えることもできないままで、持てる気持ちの全てを注ぐようにただただ抱き締めた。 「約束する、冰――もう二度と、二度とお前にそんな思いはさせやしねえ……! 生涯――命を掛けてお前を守り抜く――ッ!」  愛している――
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