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未来への招待状
高瀬芳則による拉致事件から丸二日が過ぎた頃――心身共に休養を得た冰は、氷川に連れられて鎌倉にある彼の別荘を訪れていた。
都心のビル群と違って、閑静な山道を少し入ったところにある一軒家である。周囲は竹林に囲まれていて、おいそれとは人目にもつかないプライベートな空間に建てられた、まさに別荘というにふさわしいような邸だった。
冰らが到着してしばらくの後、遼二と紫月もやって来た。事件に巻き込んでしまったことへの詫びも兼ねて、氷川が招待したのだ。
「紫月、遼二、この度は本当に申し訳なかった。俺のせいでキミらを巻き込んじまった。勘弁して欲しい、この通りだ」
冰は深々と頭を下げて詫び、氷川も同じく二人揃って謝罪をする。遼二と紫月は大慌てで冰らの傍へと駆け寄った。
「オーナー、代表、そんな……とんでもないです!」
「どうか頭を上げてください!」
特に紫月の方は、高瀬にいいように言いくるめられ、連れ去られてしまった自分に非があると思っているようで、恐縮しきりであった。
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