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親友とアタシと
「それで! どうして、風音(かざね)ちゃんは! 響也(きょうや)くんのことが嫌いなの!?」
親友の双葉(ふたば)ちゃんはテーブルに両手をついて、身を乗り出すようにアタシに顔を近づけたのだった。
「ふ、双葉ちゃん! 顔が近いから!」
「それは、風音ちゃんがはっきりしないからだよ!」
バンバンと双葉ちゃんがテーブルを叩いた拍子に、さっき届いたばかりのアタシのハイボールが溢れた。
「ふ、双葉ちゃん。溢れているよ!」
双葉ちゃんが注文したカシスオレンジも、コップから溢れ、テーブルにこぼれたのだった。
「あっ! ごめんごめん!」
アタシは双葉ちゃんがこぼした分も、おしぼりで拭いたのだった。
アタシと双葉ちゃんは小学生からの親友だった。双葉ちゃんも、アタシの同い年の従兄弟兼人気俳優兼隣人の響也のお母さんが講師を務めるピアノ教室に通っていた。
同じピアノ教室に通って、アタシ達と同い年であることもあって、すぐに意気投合したのだった。
ただ、双葉ちゃんは本格的にピアノを習いたいと考えて、小学校卒業を機に響也のお母さんが講師を務めるピアノ教室を辞めて、もっとレベルの高いピアノ教室に通ってからは、会う機会も減ってしまった。
けれども、アタシが大学に進学した時に、同じ大学の音楽科に進学した事が発覚してからは、また双葉ちゃんと頻繁に会うようになったのだった。
(昔はもっと、大人しい子だったのに……)
中学時代は一度も同じクラスにならず、また高校は別々の学校に進学したので、双葉ちゃんに会ったのは大学に入ってからだった。久しく見ない間に、昔は大人しく、いつもアタシの後ろに隠れているくらい恥ずかしがり屋だった双葉ちゃんも、いつの間にか逞しくなっていたのだった。
それが嬉しいような、悲しいような、何とも言えない気持ちになったのだった。
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