親友の告白、アタシの告白

1/2
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

親友の告白、アタシの告白

「そうしたらね。響也くんに言われたの。『俺には好きな人がいるから』って」 アタシが目を丸くしている間も、双葉ちゃんは、たわいのない内容を話すような顔で、レモン汁で汚れた手をおしぼりで拭いていた。 「だからね。私、聞いたの。『響也くんが好きなのは、風音ちゃんだよね?』って。そうしたら、何て言ったと思う?」 アタシはわからなくて、首を振った。双葉ちゃんは悲しげに微笑んだのだった。 「『風音は俺のことを嫌っているから。一方的に好きなだけだ』って。響也くんも嫌われていて、片想いしているって自覚があったんだって。そう思ったら、私が入る余地は無いなって」 「そんなこと言っていたの? アイツ……」 「そうだよ。だから、響也くんは嫌っていないって。いつも風音ちゃんのことを気にしていて、見守っているよ」 「きっと」と続けた双葉ちゃんがあまりにも辛そうで、アタシは見ていられなかった。すぐにでも抱きしめたかった。 けれども、それは響也とアタシの事を想って身を引いた双葉ちゃんに対して、失礼だと思った。 「今はもう響也くんのことは何とも思っていないよ。だから、気にしなくていいからね!」 双葉ちゃんは慌てたように付け加えた。そんなにアタシも辛そうな顔をしているのだろうか。 「この話をした上で、改めて聞くね。風音ちゃんは、どうして、そんな響也くんのことが嫌いなの?」 「アタシは……」 「あっ! 身内だから嫌いは無しだからね」っと、しっかり釘を刺されたのだった。 双葉ちゃんに何て答えようかと考えていると、タイミングが悪くメイン料理の牛タンが届いたのだった。双葉ちゃんは店員さんが追加で持ってきてくれた取り皿に、牛タンを取り分けていったのだった。 「アタシは、響也が素直じゃないところが嫌い」 「素直じゃないところ?」 双葉ちゃんは手を止めて、アタシの言葉を聞いてくれた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!