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私はアレが気になるのだ
静けさ漂う理科室。目の前の机に並べられた試験管。三角フラスコというものが、どうしてこんな形をしているのかというのも気になるけれど、今の私は……
「ねえ美保……あれって何?」
一点を凝視したまま微動だにしない千佳子が、隣でこっそりとスマホをいじっている美保に尋ねた。
「あー、あれはネオンテトラだよ。なんか松崎が飼い始めたんだって。松崎のやつずっと独身だし、ついに熱帯魚に癒しを求め始めたんじゃない?」
そう言って美保はクスクスと肩を小さく震わせながら、前方で試験管片手に授業を進めている松崎をチラリと見た。
同じように教師を見ていた自分の視線を少し横にスライドさせれば、窓の近くには小さな水槽。
その中を自由気ままに泳ぎ回る熱帯魚に、千佳子が思わずゴクリと唾を飲み込む。
「……美味しそう」
「え?」
突然千佳子の口からこぼれ落ちた言葉に、美保が目をパチクリとさせて彼女の顔を凝視した。それに気付いた千佳子が慌てて両手を振る。
「ち、違うの! なんか昼休みに食べたカレーパンのこと思い出しちゃって……」
「あれ? 千佳子が食べてたのってメロンパンじゃなかった?」
「え?」
その言葉に、頭をかいていた右手が思わず止まる。
私にとってカレーパンもメロンパンもパンはパンなのだ。どちらが茶色で、どちらが緑かなんてどうだっていい。
そんな些細な違いなど、あの虹のように輝く小魚たちに比べれば、どっちも同じようなものなのだ。
そんなにお腹空いてるならやっぱり今日は帰りにマックだね、と無邪気に呟く美保から視線を逸らし、千佳子は苦笑いを浮かべる。
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