化け猫千佳子

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化け猫千佳子

 望月千佳子は化け猫と言うには少しおっちょこちょいで、かといって普通の猫かと言われればそうではない。 実際私は、今もこうやって学校指定のセーラー服はちゃんと着ているし、隣の席のクラスメイトと同じようにシャーペンだって握っている。もちろん爪は、人間の爪だ。  たまに先生に当てられて、「にゃん」と返事をしそうになるけれど言ったことは、まだにゃい。  長年化け猫として生きてきた私にとって、人間の生活に潜り込むなど容易いこと。難しいことなんて何もないし、必要なものがあればちょちょいのちょいで生み出せる。  ほらこうやって、さっき窓から入ってきた葉っぱを右手で包み込むと…… はい、『消しゴム』の出来上がり。 私の力を持ってすれば、こんなこともできるのだ。  ただ一つ難点があるとすれば、姿形をそっくりに生み出すことはできるのだが、なぜかいつも『猫ちゃんシール』がついてくる。 おかげで仲良くなったクラスメイトからはいつも、「千佳子ってほんと猫好きだよね」と言われる始末。猫が好きも何も、私は立派な化け猫なのだ。  もちろんそんなことを声を大にして言うわけもなく、私は「あはは」としっかり覚えた人間の笑い方で話しを誤魔化す。  どうやら私の化ける術はよっぽど素晴らしいようで、この学校に来てからというもの、毎日のように人間の男どもから声を掛けられる。 「望月さんってカレシいるの?」 「カラオケ好き?」 「ライン教えて」  次々耳に流れ込んでくる意味不明な呪文の言葉に、最初は頭がクラクラしていたけれど、それも今ではちゃんとわかってきた。 ちなみに、スマホは持ってにゃい。もとい、持ってません。
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