化け猫千佳子

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 そんな私の学校生活。始めたきっかけは至極単純で、面白そうというただの興味本位。  毎日毎日、同じ服を着て、賑やかな声を奏でて、同じ場所へと向かっていく人間たちを草むらから眺めていては、一体あそこに何があるのかと妄想を膨らませていた。  美味しいお魚? それとも珍しい猫じゃらし?  膨らみ続ける妄想が、日を追うごとに強くなり、私は今こうして二年五組の生徒としてこの教室の席に座っているのだ。  ちなみに、食堂という場所でお魚は見つけたけれど、珍しい猫じゃらしはまだ見つけてはいない。そろそろ体育館の裏側にでも忍びに行こうかという魂胆である。  ま、そんなことを思いながらも何不自由なく人間生活を送っている私なのだけれど、一つ悩み事がある。 もちろん私は立派な化け猫なので、悩み事と言ってもほんの些細なものだ。頭も賢くて、誰もがあっと驚く力を使える私にとって、本気を出せばすぐに解決できること。  ただ、ちょっとど忘れしちゃっただけ。そう、ほんのちょっと忘れただけ。  立派な人間に変身した自分から、もとの姿に戻る方法を……
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