私は優秀

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私は優秀

「ねえ千佳子、今日学校終わったらマック行かない?」 「マック?」  いつものように明るい声で話しかけてきた美保に、千佳子は一瞬眉間に皺を寄せた。 人間の言葉はようやく理解できるようになってきたが、略されるとわからない。  あー、あの変な黄色いピエロが立ってる店か……。  やっとクラスメイトの言葉を理解できた千佳子が、今度はおもむろに口を開く。 「ごめん美保。今日も帰ったら勉強しなくちゃいけなくて」 「えー! あんなにいつもテストの点数いいのに、これ以上まだ勉強する気なの?」  何の疑いの色も滲ませていないパッチリとした両目が、千佳子の顔を捉える。 千佳子は「うん」と冷静な口調で返事をすると、そっと美保の視線から目を逸らした。  テストの点数がいいなんて当たり前だ。姿カタチは人間の女の子とはいえ、こちとらもう五百年は生きている。魚の取り方はもちろん、その気になれば、高枝に止まっている鳩だって一瞬で捕れる。 だからそんな私にとって、すでに答案が記入されたテストをこっそりと生み出すなど容易いことなのだ。  千佳子はそんなことを思いながら、鞄の中から理科の教科書を取り出すと、ゆっくりと立ち上がった。 そんな彼女の様子を見ていた美保が、「ヤバい!そろそろ理科室に行かないと」と言って大慌てで自分の席へと戻っていく。  人間とは本当にどんくさいものだと思いながらも、美保の背中に向かって「外で待ってるよ」と優しさを投げかけ、千佳子は先に扉へと向かった。
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