私はアレが気になるのだ

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「じゃあ今回の実験がうまく成功した場合、この試験管の色は何色になる? えーと……望月、わかるか?」  突然松崎の声が耳に届き、千佳子は「ハ、ハイ!」と慌てて立ち上がる。 「に、虹色です!」  その瞬間、教室に流れる時間が一瞬止まったような気がした。でもこれは、私の妖術のせいなんかじゃない。  同じように呆然と固まっていた松崎が、今度は思い出したかのように口を開く。 「な、なかなか斬新な答えだな望月……だが、残念ながら答えは紫だ」  松崎が戸惑う口調で答えを告げた直後、隣に座っていた美保がぷっと吹き出した。それと同時に、彼女の笑いが病のように教室中に伝染していく。  その光景、私にとってまさに地獄絵図。  ……なんたる失態。  顔を夕焼けのように真っ赤に染めた千佳子は、おずおずとお尻を再び元の場所へと戻した。 妖術も使わず、教室を笑いの嵐に包んでしまった自分の力を恨みながら、彼女は静かに顔を伏せる。 周囲からは、「望月さんもあんな間違いするんだね」と、望んでもいない称賛の言葉。  次に当てられた時は、周りに魚がいないことをちゃんと確認しておこう。  そんなことを思いながら千佳子はぎゅっと下唇を噛むと、少しだけ顔を上げて、天敵だらけとなった教室を見渡した。 よほど自分の失態は珍しかったのだろう。視界に映るクラスメイトたちは、まだ面白そうに肩を震わせている。  いっそ私の本当の力を見せて、侮辱した者をこらしめてやろうかと思った時、教室の前の方から視線を感じた。  もしかして……、ときゅっと眉間に皺を寄せてその視線のもとを辿っていく。 すると、クスクスと笑い声が飛び交う教室で、ただ一人、あいつだけはやっぱり無表情のまま私のことを睨むように見ていた。
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