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観点2
僕は絵に顔を近づけてみた。
すると、同じ「赤」でも、絵の具が濃いところや、薄いところ、かすれているところなどがあって、そこに透けて見える「筆の動き」の中にこそ、彼女のオリジナリティがあるのかもしれない、と思った。
書道家のように。
夏目漱石は、良寛和尚の「天上大風」と書いた書を見て、「これなら頭が下がる」「全財産をつぎ込んででも欲しい」と言ったそうである。その四文字の書に、良寛の偉大な人柄が表れているのだ。
しかし、そのような観点でこの絵を見つめてみても、別に「頭が下がる」という心持ちにはならなかった。
ただ、いつも教室で会っている凡人、山田中子の、別にありがたくもない面影が眼に浮かぶようである。
だいたい、クラスメイトに頭を下げるなんておかしい。
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