砂とラムネ

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 砂は付いてなかったけど、その頬に指先で触れてみる。思い切り固くなった横井さんの表情に、くすぐられるみたいにまた笑ってしまった。  彼女の方は、笑わなかった。俺のことをじっと見上げたまま、淀みのない瞳を揺らしている。  欲求は、蓋を開けると勢いよく立ち上るちいさな泡のようだった。こみ上げてきたそれにもう一度嗤い、そして当然のように彼女の唇を塞いだ。  横井さんは、抵抗しなかったと思う。抵抗しないことと、受け入れてもらえることは、果たしてイコールなのだろうか。  すぐそこで震えている長い睫毛。彼女の唇に舌先を這わせると、甘ったるさの奥に、ざらりとした感触が残った。 ーendー
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