砂とラムネ

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  ”変わってない“の意味について一瞬悩んだけど、褒め言葉として素直に受け止めることにした。 「横井さんは綺麗になったね」 「あー、そういうところも変わってない」  返答ではない返事を口にして、くすくすと笑う彼女。その隣に、割と仲の良かった旧友の姿はもちろんない。それだけで、なんとなく離れがたくなってしまった。 「どうしたの? こんなに遅くに」 「ちょっと、買い物」  同じコンビニエンスストアのビニール袋を下げていた横井さんは、華奢な手で重たそうなそれを僅かに持ち上げた。 「一人じゃ危ないし送るよ」 「平気だよ。川嶋くんはどうしたの?」 「あー、俺は……なんとなく、散歩?」 「えー、なにそれ。当てもなく?」  咄嗟に「海でも見ようかなとか思って」とふざけてみると、彼女は「私も見たい」なんてことをさらりと言ってのけた。
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