砂とラムネ

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 怠い暑さは、夜遅くになってからも街中にだらしなく広がっていて、期待した清々しい風なんてものは、元々持ち合わせてなどいないと夏の夜が囁いてくる。  近所のコンビニで、普段は目に留まることのないハイボールの缶を、なんとなく手にとって数本買った。  帰りは遠回りすることにして河川敷を登った。田舎の夜更けの暗さは深い。静かな闇が川の流れとともに海へと向かっている。道路沿いに侘しく立っている街灯。乗用車のヘッドライトが自身の肌を照らし、そして足早に去っていった。  潮の匂いのする方に顔を向けた。あと少し歩けばいつもの浜辺だ。懐かしい、なんて郷愁らしきものに浸っていたときだった。 「川嶋くん」  鈴の音のような声に呼ばれ、そちらに視線を寄せた。ノースリーブのワンピースにサンダル。黒い髪を後ろでひとつに結わえた彼女が、目を細めて俺のことを見上げていた。
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