砂とラムネ

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「じゃあ、一緒に行こっか」  冗談ぽく言ったのは、ばっさり断られるだろうと思ったから。自己防衛だろうか、昔から、本音を軽い調子で言ってしまうという情けない癖が俺にはある。  いい歳になったのに変わらないその悪癖に、心の内で密かに苦笑いする。それでも彼女はにこっと笑って、「うん」と頷いた。 「川嶋くん、いま実家暮らしじゃないよね?」 「うん、とっくに出てるけど。今たまたま帰ってきてて」 「そうなんだ」  後から「どんな話したの?」と聞かれても答えられないような、とりとめのない会話を交わしながら、二人で海を目指した。  あの頃はいつも、自転車をこいで海まで向かった。確か五分程だったはずだけど、歩くと意外と時間がかかる。  波の音が聞こえる場所まで、ゆっくりと夜道を辿った。
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