砂とラムネ

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 夜の闇と海が重なるようにして混ざり合い、境目を曖昧にしたまま一面に広がっている。  俺の足元で鳴いているサンダルは、いつ買ったものだったか。学生の頃か、もう少し後か。  下らないことを考えながら、ほつれたサンダルで砂を踏みつけた。すぐに、砂浜にサンダルが盗られそうになり、膝下辺りの変なところに力が入る。 「わっ」  か細い声が隣から上がった。見ると横井さんも、砂に足を取られてよろめいていた。 「大丈夫?」  ここまで来て、ようやく彼女の持っていた重たそうなビニール袋に手を伸ばした。自分でも嫌になるほど、気が利かない。だから恋人とは長く続かないし、プロポーズしようとしていた女に、突如浮気されたりする。 「おかしいなぁ。あの頃はフツーに歩けてたのにな」  横井さんは、心底可笑しそうに楽しげな声をあげている。大人の無邪気さに、その落差に魅せられ、少しの間見とれてしまった。
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