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「中身、なに? 結構重いけど」
照れ隠しにそう言って、ビニール袋の中を覗くような仕草をした。横井さんはまるい目をぱちぱちとさせてから、「あっ」と声にならない声を出す。
「忘れてた、アイス」
白い手を伸ばしてくる横井さんに見えるように、持っていた袋を開いてみせた。華奢な手がアイスを探り当てる。汗をかいた水色のそれを取り出し、恐る恐るといった顔で俺のことを見上げてきた。
何かを訴えてくるようなその表情に、思わず噴き出してしまった。
「まだ食べれるんじゃない?」
「だ、大丈夫かな」
「うん、何ならもう、今食べれば?」
「……ふたつあるんだけど、川嶋くんも良かったらどう?」
本当は、誰と食べるものだったんだろう。そんなことが頭の隅を過ったが、その引っ掛かりみたいなものは無視して、彼女が差し出してきたアイスを受け取った。
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