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――――7分後。個室から出た俺は、鏡を見ずとも穏やかな表情をしているのが自覚できた。
腕時計を確認。時間は…まだ大丈夫。
あの苦痛と不快感あら解放されて、いつもより仕事ができそうな気さえする。
陽気なテンションに包まれながら洗面台へ。
液体石鹸ムースにちょうど良い温水。ちゃちゃっと手を洗う。鏡で髪もチェック。
よっし問題なし。
はぁー、どうなるかと思ったけど焦る必要はなかったな。
両手をズボンの腰元で拭いながらそう思った。
心に余裕もできたしゆっくり向かおう。出入口のドアノブを横に引いた。
ガッ。
んあ?
もう一度。
ガッ、ガッ、ガンッ。
何度やっても開かない。
おかしい。外も内も鍵なんかどこにも無いはずなのに、絶対鍵が掛かっている!?
全体重を利用してもびくともしないドア。窓も無いこの部屋に閉じ込められてしまった。
「おい誰か-!!助けてくれ!!」
叫びながらドンドンドンとドアを叩くが反応は無い。
どうなってんだ!!
誰がこんなことを、いったい俺がなにをやったって、いう、んだ……?
怒りが溢れて目線を落としたら、その先の床に文字の書かれた板きれが落ちていた。
嫌な感じがして、その板を拾った。書かれていたのは
『好き専用につき、違反者は罰則あり』だった。
これ、外に書いてあった……?
「あ、」
頭の中で全部繋がった。
閉じ込められた理由は単純だった。
俺がさっき、濡れた手をズボンで拭いたからだ。
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