孤独な気球

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孤独な気球

 あの穴はなんだろう? 物心ついた頃、記憶の始まった時からそう思っていた。  私の住む場所はいつも夜だった。 そして、暗い空には、大きくて空より黒い穴が開いている。 真っ黒で、先が見えない。この世界で最も大きな穴。 あの先がどうなっているのか、何かあるのか、何もないのか、誰も知らない。    この場所には、私の乗る気球とこざっぱりとした草原、そこに大きな舗装道が一本。景色のど真ん中を貫いて、地平線の彼方まで抜けてゆく。 その道路の延長線上に黒穴が鎮座する。 両側はひたすらに爽やかな草の海が広がっている。 私は夜空に浮かんだ気球に乗って、ずっとその景色を眺めていた。 いつかあの先に行ってみたい。人であれば誰しも興味を持つだろう、未知への好奇心がうずいていた。  でも、ある時、気付いてしまった。 穴以外にも不思議なことが山ほどあった。 どうして私以外に誰も居ないのか。 どうして気球に乗っているのか。 どうして周りに何も無いのか。 私は、気が狂いそうになった。 この世界は、孤独と違和感で構成されていた。 なんでそれに気付かなかったのか、否、なぜその事実に気付いてしまったのか? 気付かなければ、今まで通り暮らせたのに――  その時だった。 今まで永遠にも等しいほど夜が続いたこの世界が、一斉に照らされた。 目が潰れるかと思うくらい、光と色が眩しかった。 青空には、くっきり輪郭が浮かび上がった穴が見えた。 やはり穴の向こうは黒一色だ。 そう思ったら、穴の中心から、丸いゴマみたいなものが近づいてきた。 点のようだったが、徐々に大きくなっていくそれは、 穴をぴったり埋め尽くすサイズの目玉だった。
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