プロローグ

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 香織は小学校以来の幼馴染であり、僕の彼女でもある。そして香織と美鈴は1年生の時に同じクラスだった親友。そして航平は僕と同じ塾に通う友達だ。その航平から美鈴と付き合いたいという相談を受けたのは1ヶ月前のこと。その後僕は香織と相談の上、航平と美鈴をダブルデートに誘ったのだ。デートコースはショッピングモールで一緒にランチを食べた後水族館を見て回るというもの。その途中でお互いにB'xが好きだということがわかり、ゼンブトイチブが良いとか、Phantom of the Soulが良いとか、かなり盛り上がっていた。そして最後は観覧車。僕と香織は航平達と別々のペアに分かれてそれぞれ乗り込んだ。 「あの感じだと、うまくいきそうだね」  観覧車の窓から夕焼けの赤い光が射し込み、青い海がどこまでも広がる中、香織はそうにこやかに僕に語りかける。 「うん。僕もそう思うよ」  僕はそう告げると、香織の手にそっと触れ、肩を抱き寄せた。  観覧車は夢の世界から徐々に徐々に舞い降りていく。観覧車の扉が開かれると、僕たちは再び現実の世界へと降り立った。 ――航平達はきっと手でもつなぎながら仲良く出てくるんだろうな。  そんなことを思っていると、航平達の乗っているゴンドラの扉が開かれる。 そこから出てきたのは手に手を取り合った仲睦まじいカップルが降りてくるはずだった。ところが…… 「何で?何で松葉さんの曲の良さが分からないの?」 「お前が分かってないだけだろ。あのバンドは、稲本さんの歌詞で成り立ってるんだ。いい加減分かれよ!」  あろうことか、B'xのことでケンカをしながら降りてきてしまったのである。それからというもの、この2人は会うたびごとにケンカするような仲になり、今もこうして文化祭そっちのけで口論をしているわけだ。
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