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魔術師は江戸川乱歩の最高傑作なのか?
江戸川乱歩は生涯沢山の作品を発表し、現在も日本の推理小説の元祖としてまた名探偵明智小五郎や少年探偵団の生みの親として老若男女に深く読まれている。
かくいう私もプロフィールに書いてる通り小学校の図書館で借りたポプラ社の少年探偵団シリーズが原点である。
乱歩の小説は数多くのエッセンスが詰まっている。
推理小説は基本ながら、冒険もの、ホラー、SFもさることながら成年を対象にした作品はエログロもところどころに散りばめている。
明智小五郎が蜘蛛男に次いで登場するこの魔術師はその完成度が非常に高い作品だ。
資産家一座に復讐をする魔術師と名乗る盗賊、表向きは手品師であるが、その惨殺方法はホラーサスペンスに満ちている。
ピエロに変装した敵はのちのスティーブンキングのItに十分通じる怖さだ。
さらに盗賊団との対決、少年探偵団の活躍は冒険活劇な面白さ、しかもこの作品には明智の恋愛ストーリーも盛り込まれている。
そして最大の本格推理としての魅力は三重に仕掛けられたどんでん返しである。
かのエラリークイーンの名作Yの悲劇はこの作品に影響をうけたのではないだろうか。
その大胆な犯行トリック、共犯者、読者は唖然とするばかりである。
事件が一件落着したそのあと、真の犯人がわかったところでさらに衝撃をうけるのである。
1930年に書かれた作品で独特の活劇調はさすがに古さを感じるが本格そのもののトリックは色褪せていない。
やはり魔術師は最高傑作という勲章に値する作品だと思うのである。
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