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時代劇ミステリー〜木枯し紋次郎の美学 前編
笹沢左保が生み出した時代劇のヒーロー、木枯し紋次郎は当時夜の時間帯に放送されたのにも関わらず、視聴率の高かった番組である。
自分が見たのは再放送だと思うが、その頃は物心もついていてその内容の高さに驚いた。
このドラマを手掛けた市川崑監督の力の入れ方がよくわかる。
木枯し紋次郎は上州新田郡三日月村を10才の時に離れ、世を捨てた渡世人、「あっしには関わりのないことで」といい、人間関係を嫌ってるが、自然と事件や騒動に巻き込まれてしまう。武士のような正式な刀捌きではないが、実戦で身につけた素早い動きと突きの殺法で敵を倒していく。
いわば和製ウエスタンともいうべき設定であるが、このテレビ版はミステリーと人間ドラマがさらに盛り込まれていた。
自分の印象で特に鮮烈なのは第3話と最終話だ。紋次郎には毎回ゲストが登場する。
第3話峠に哭いた甲州路は原田芳雄が源太という片腕のヤクザを演じている。
とある村にたどり着いた紋次郎はあばら屋を見つけて休んでるところを村人たちに見つかり村を追い出される。しかし片足の少女の住む宿に一宿一般の宿を得る。
そこへ原田芳雄演じるヤクザの源太が現れる。実は源太は娘殺しの濡れ衣を村人たちに着せられ、腕を切り落とされ村を追い出されたのだ。
復讐に燃える源太は村人たちを矢継ぎざまに切り殺していく。
都合のいい村人たちは紋次郎に助けを求めるが関わらない。
そして娘殺しの真犯人がわかる。
片足の少女がそうであった。彼女は娘と友達で江戸へ嫁に行く友達を嫉妬して崖から突き落としたのだ。
事実を知った源太は怒り狂い少女を斬りつける。
瀕死の少女を背負った紋次郎はここで我慢の尾が切れる。自分に心を開き、泊めてくれた娘のために。
一目散に源太に向かい斬り倒すのだ。
そして峠の向こうを見たかった少女を背負い山の頂上に立つ紋次郎の姿を映しこの物語は終わる。
この物語に出てくる人物は全て正義の味方ではない。悪に手を染めた人間ばかりである。
しかし紋次郎は言う。だからといって復讐のために村人を殺し、女を手にかけていいことにはならない。
そこには彼なりのルールが存在するのである。
後篇に続く。
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