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そんなある日、ふらっと入った大阪梅田の地下街の老舗喫茶店 風月堂で妻となる文さんと出会ったのである。
龍さんの文さんの第一印象は清潔な女性だ。
風月堂は、高級感が売りの喫茶店だ。壁にはレンブラントの「マールテン・ソールマンスとオーペン・コーピット」の西欧貴族の肖像のレプリカや、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」のテラスに集まる群衆のレプリカなどの高級絵画が掛けられ、テーブル、イス、食器の調度品も品良くルネッサンス風の教会を思わせる落ち着いた拵えの物で統一されている。
その入り口からテーブルの合間、合間を縫って、真っ白のシャツと黒のカフェエプロンを颯爽と着こなした文さんが行く。
「ちょいとよろしいかなお嬢さん?」
と、こじゃれた精神の持ち主だった若い龍さんが、文さんを呼び止めた。
「はい、少々お待ちください。スグに伺います」
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