3龍さんと文さん

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 ――茶川家リビング。 「龍さん、アイスコーヒー飲むでしょう?」  と、リビングでパソコンへ向かう龍さんに茉奈が尋ねた。  龍さんは、パソコンへ長い時間向き合ってるせいで目が乾いてシパシパするのか、メガネを外して目薬を差した。 「はい、龍さん。アイスコーヒー」  コーヒーを運んできた娘の茉奈の姿に、霞んでいた目に潤いが戻った龍さんは、自分の目を疑った。 「文……」  龍さんの目には、娘の茉奈が、出会った頃の妻、文の姿が重なった。  龍さんを見つめて、文さんが微笑んだかと思うと、 「龍さん、龍さん、大丈夫?疲れてるんじゃない?」  と、心配して気遣う茉奈の声がした。 「ああ、茉奈か」 「ああ、茉奈かってがっかりした返事ね龍さん」 「いや、ちょっと、昔を思い出してね」 「それはどんなこと?」  龍さんは、若いころのようにはにかんで、 「とても楽しい時代の思い出さ」  と、応えた。  すると、茉奈の足元をついて歩くワガハイが焼きもちでも焼いたように、「にゃ~ご、にゃ~ご」と甘えた声を出した。 「あらあら、ワガハイ、ちゅ~るが欲しいの?ちょっと待ってね」  茉奈とワガハイ、愛する家族との生活がこのままずっとつづけばいいのに……。と、龍さんは思った。  つづく
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