307人が本棚に入れています
本棚に追加
それより、とハルトが俺に向き直る。
「これからどうする。今日、住み込みの仕事が見つからなかったら、また公園で寝るとか考えてるんじゃないだろうな」
「最悪の場合は、借金とかも考えて……」
「お前、本当に何も知らないんだな。住所不定無職で借金とか。貸してくれる業者もあるけど、法外な利子取られて結局自滅するぞ」
「………」
言われてもなお、俺は何とかなると思っていた。住み込みが駄目なら日払いのバイトで、切り詰めて金を貯めながらネカフェに泊まるとか、公園が危険なら別の場所でとか。
それを言うと、ハルトが溜息をついて腰に手をあてた。
「イラつくほど甘過ぎるけど、前途有望な若者を見殺しにするのも寝覚めが悪いからな。取り敢えず知り合いに仕事紹介してもらえるか聞いてやるから、靴履いて外出ろ」
「え、で、でも」
「これから仕事なんだ。話の続きは事務所でするぞ」
荷物も置いたまま外に出されて、俺は不安げにハルトを見上げた。
「事務所でって、俺、そんな……」
ハルトが俺に呆れつつも心配してくれている、ということは流石に伝わっていたけれど、それでも俺の不安は完全には拭えない。人一倍無鉄砲で無知な俺は、人一倍臆病でもあるのだ。
「いいから行くぞ」
説得するのも面倒臭いらしく、ハルトが強引に俺の背中を押す。よろけながらエレベーターに乗り、結局、俺はハルトについて行くことにした。
アテがないなら従うしかない。どうせ自分一人で行動しても駄目なのだから、利用できるものは利用しておいた方がいい。──恐らくこの考えもまた、甘いのだろうけれど。
最初のコメントを投稿しよう!