上京初仕事?

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 これは、策略に嵌ったと言えるのだろうか? それとも天啓の一種なのだろうか。  考えても分からず、しかも話は勝手に進んで行く。 「じゃあ武志、チルに色々教えてやってな。俺、昼飯買いに行くついでに待機室の雑誌とかも買ってくる」  ハルトが事務所を出て行ってから、早速武志さんが俺の前にあったパソコンを立ち上げて説明を始めた。 「ここに来たら、初めはメールの受信をするんだ。それから昨日の売上を出勤したボーイ毎にまとめて、今日の予約とスケジュールのチェック。今月全体の売上が入力されてるエクセルを更新して、出勤してきたボーイがいたら待機室の空き状況を更新して……」 「ちょ、ちょっと待ってください。そんないっぺんに言われても俺……」  未だ頭が回らないのに、突然詳しい説明を受けたって理解できるはずがない。  俺の動揺に気付いた武志さんが、力無く笑う。 「取り敢えず今日の入力とかその辺のものは全部終わってるから、チル君には早くウチのシステムを理解してもらおうかな」  武志さんが山積みになった書類や雑誌の中から、二冊のファイルを抜き取って俺に差し出した。ブレイズロックの料金システムや注意事項などが書かれているファイルと、今現在所属しているボーイのプロフィールが載った分厚いファイルだ。  俺は店のマニュアルやシステムよりも先に、興味津々でボーイのプロフィールを開いた。 「すごいな、皆ホストみたいですね」  想像していたよりも皆男前で、若い。俺と同い年のボーイもいるし、スポーツ選手のような体形のボーイもいる。中には中学生かと見紛うほどのあどけない顔をした子もいた。 「何か別世界だなぁ。超絶イケメンだと思ってた大河さんだけど、他の人達もみんなイケメンだ」  感嘆の溜息をついてファイルを捲っていると、武志さんが笑って言った。 「今って不景気だからさ。男も女も、信じられないくらいルックス良い子が風俗とかAVやる時代なんだよね。雇う側としては有難いけど、その分他店でも良い子が揃ってるから油断できないんだ。今は風俗もネットで頼めるし、競争率は激しいよ」 「そうなんですか。何か、すごいカルチャーショックだな」 「その中でも、今ウチで一番売れてるのはタチだと大河、ウケだと玲遠なんだ」 「玲遠さんって、あの、『先輩』のことですよね?」 「そうそう、先輩」  ちょうど玲遠のページを捲ったところで、武志さんが言った。 「玲遠は見た目がいいだけじゃなくて、信じられないくらい接客が上手いんだよ。正直、俺達の前で見せてる顔と客前で出してる顔、全然違うから。役者だよあの子は」 「そ、そんなに違うんですか。すごいな……」  他に言葉が見つからず、俺はファイルの中の玲遠に目を落とした。前に撮った写真なのだろう、俺が会った時と髪型が違う。写真は他のボーイと同じく三種類載っていて、服を着た状態と半裸の状態、それから下着一枚の状態となっていた。  身長171センチ、体重55キロ。B型、得意スポーツはスノーボード。 「P15って何ですか?」 「大きくなった時の、アレのサイズだよね」 「……15センチ……」
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