ウソツキな君と透明な世界

序

「ねぇ、藍菜もそう思うよね？」
　マミタスが半歩後ろを歩いていた私を急に振り返った。同意を求めて、仲間意識を確認するつもりだろうか？
「えへへ、どうかな？　私、自転車取ってくるね」
　私はわざとらしい笑みを浮かべて、曖昧な返事をし、慌ててその場を離れた。こういう反応をしてしまう自分が嫌いだ。
   自転車置き場から自転車を押して戻ってくると、マミタスは特に気にした風もなく、正門に寄り掛かって、ののかとのお喋りを続けていた。私の悪口は言ってないみたいだと、胸を撫で下ろす。
「あ、バスが来たみたい」
　通りを振り返ると丁度バスがこちらに向かってやって来る所だった。マミタスはバス通学なので、ここでお別れだ。バスに乗り込んで座席に腰を下ろした所で、バス停前に立つ私たちを見下ろして手を振った。
「バイバイ」
「また明日」
　バスが発車するのを見送ると、私たちは方向転換し、バスがやって来た方角へと並んで歩き出す。駅前通りまで歩いてくると、私は自転車に跨った。荷台にののかが腰を下ろす。