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小森先生は右手を挙げて、こちらに手を振ると、笑顔で走り去って行った。別れの挨拶も爽やかだ。
「バイバーイ」と、ののかとマミタスは、先生の後ろ姿に手を振っていた。
「コモリンってさ、ちょっと熱血教師気取ってて、サムイ時あるよね?」
小森先生がいなくなると、急に小声でマミタスが話始めた。
「ののかもそう思ってた。昔の学園ドラマ見過ぎなんじゃない? コモリンってさ、昭和生まれで、独身で令和を迎えた平成ジャンプってやつでしょ? ちょっと考え方が古いんだよ」
二人はクスクスと笑い始める。嫌だな。私は小森先生が好きなのに、好きな先生の悪口なんか聞きたくない。上履きからローファーに履き替えると、私たちは揃って外に出た。
「入学式の時の話もウザかったよねぇ。『高校生になったから、目標を立ててみよう』的なやつ。あんなのイマドキ、小学生だってやらないよねぇ?」
「うちらは基本、今を生きているからね。目標に向かってとか、一生懸命とかダサイよねー。まぁ、コモリン、いい先生だし、イケメンだから許すけど、自分の価値観を生徒に押し付けないで欲しいよねぇ」
「言えてるぅ」
二人が楽しそうに小森先生のことを話している間、私は唇を噛みしめて、右肩に掛けた鞄の持ち手をグッと握り締めていた。
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