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男の失態
目の前に広がる、赤、赤、赤、赤赤赤赤赤赤
赤色がカーペットにねっとりと染み込んでいる。
「うそ...だろ...ちがう...ちがう、悪いのはオレじゃない、あいつがあんなこと言うから....」
男の目には涙が浮かんでいた。
そうなのだ、その男は、こんな、こんなことがしたかったわけじゃない。ただ人間の三大欲求の一つを満たすために動いただけだったのに。あの人があんなことを言うから、こんな行動になってしまっただけなのだ。
思わず、男は手を口にあてる。
口についたねっとりとした感覚とともに、ふわっとにおいがした。
「いいにおい....」
男は手についたその液体をぺろりと舐めた。
「おいしい....そうだよ、これが、ほしかったんだよ。なんで、なんで、ダメって言ったの?」
ぶつぶつと呟きながら、男は全身についたその液体をまるで、自分の体を食べるように、夢中になって舐めまわした。
時間を忘れるほどのおいしさだった。
だから、気づかなかったのだ。
「なに...してんの...?」
帰ってきた、その者の存在に。
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