卵かけご飯は美味しい!

1/1
前へ
/5ページ
次へ

卵かけご飯は美味しい!

「大丈夫でした?」 「ふん、あのくらい大した事ない……赤子の手をひねるも同然じゃ!」 「そうでしたか」 「お主、名はなんと申す」 「リルって呼ばれてますよ」 「リルか、妾はレベッカ・ガクレット! とある異世界の魔王の娘…じゃが、今はただのレベッカじゃ」 「レベッカ・ガクレット……あぁ、レベッカさんですか。」 「そうじゃ! 今からリルにはこの世界を案内する権利をやろう!」 「案内ですか……まぁ、いいですけど何処に行きたいんですか?」 「そうじゃな……まずは」 ぐうぅぅぅ……とお腹がなった。 リルは思いついたような顔をした。 「じゃあ、まずはご飯を食べますか」 「ご飯か……その提案を認めてやるのじゃ!」 「なら、俺が働いてる所にしましょう。 迷子になると大変なので手でも握りましょうか?」 「妾を誰だと思っておるのじゃ!」 「俺からしたらまだまだ小さな子供ですよ」 「妾は魔王の」 「今はレベッカ何でしょう?」 「確かにそうは言ったが……」 「それに、迷子になったらさっきみたいなのが沢山やってきますよ?」 「うっ……それは嫌じゃな」 ゆっくりと妾が手を出すと優しくリルは手を握ってくれた。 リルはこの国について話してくれた。 この国は日本という国で、世界的には平和らしい。 本当にそうなのかは謎だが……。 そしてこの街は宇都宮という街でリルはレストランという店で働いているようだ。 「ここが俺が働いてる森熊レストランです」 「ほほう……」 「とりあえずかるーく作りますんで」 そう言ってリルはキッチンに入り何かを作っている。 白いゴハンの上に黄色い黄身が落ちた。 そして、妾の前に置かれた。 「はい、TKJ……卵かけご飯です。美味しいですよ」 「まさかとは思うが……生の卵を妾に食べさせるつもりか?」 「確かに卵って生で食べるのは危険ですしね。でもこの国の卵は安心して生で食べられるから」 「ふん……もしも妾がお腹を壊したら許さないぞ!」 「はいはい……」 渋々と黄身をスプーンでつつく。 黄色い黄身が真っ白なゴハンと絡みあって黄色くなった。 スプーンでゴハンを掬って口に近づけるが、手がプルプルと震えている。 手が震えているだと……? 妾は魔王エグレシア・ガクレットの娘じゃぞ!? こんなもの……こんなもの妾には怖くないのじゃ! 勢い任せに口に入れる。 口の中に黄身の優しい風味が広がった。 ゴハンの温かさと黄身の味が合わさって、何処か懐かしさすら感じる。 昔……妾が風邪をひいた時に食べたリゾットにそっくりじゃ。 「おいしい……美味しいぞリル!!」 「だから言ったでしょ卵かけご飯は美味しいって」 「でも、何かが足りない気がするのじゃ」 「足りない……醤油かけてみたらどう?」 「なんじゃ、そのショーユというのは?」 「醤油って言うのは……いちいち説明すると長いな……まぁ簡単に言ったら、万能な調味料だよ」 リルはそう言って、円を描く様に醤油を垂らした。 ショーユがかかった所をスプーンで掬い口の中にいれる。 なんじゃこれは!! ショーユの甘さが卵かけゴハンにあっておるのじゃ! 恐るべき発見なのじゃ……。 騎士の称号を与えるに相応しいほどに……! カツン……と音が響いて器を見るともう卵かけゴハンは入っていなかった。 「もう無くなってしまったのじゃ……」 「また後で作ってあげますよ」 「リル、それは本当か!!」 「卵かけゴハンなんてすぐに作れますし」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加