勇者によって魔王は倒されました めでたしめでたし?

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勇者によって魔王は倒されました めでたしめでたし?

「この世界に祝福をマルタルロサークロ!!」 「グワアァァァァァァァァァァ!!」 醜い断末魔と共に魔王エグレシアは消えていった。 これで世界に平和が訪れるはずだ。 やっと僕も勇者として活躍しなくて済む……そう考えたらさっさとこの城を破壊しなければ。 「そう言えば、魔王に娘がいたんだっけ? だったら早く殺しておかないと」 当たりを見回すが特に変わった物もない。 あるのは大きな玉座。 魔王はあの玉座から降りることは無かった。 ならば玉座に何らかの仕掛けがあるだろう。 重い玉座を動かすと地下へと続く階段が現れた。 直感的にこの下に娘がいるのだろう。 「優しい父親だねぇ……今回も勝てるって思ってたんだろうけど」 魔王の最後の表情を思い出す度に笑いが込み上げてくる。 魔王の敵落ちた兄さんを倒した時と同じ――いや、それ以上に面白かったのは久しぶりだ。 螺旋状の階段を降りていくと、大きな扉が現れた。 鍵がかかっているみたいだが、そんなもの魔法で破壊すればいいだけだ。 「施錠されし鍵よ今ここにて破壊されよ! ロワレコ!」 バギっと大きな音をたてて南京錠が壊れた。 中に入ると娘はいなかったが、魔法陣が床に書かれていた。 魔法陣を見るに何処か別の場所に逃げたみたいだ。 「まぁ、この魔法陣さえ無ければここには戻ってこれないだろうし」 魔法陣を消す為に聖水を取り出そうと思ったが、面白い事を思いついた。 きっと、いつか魔王の娘はここに戻ってくるはずだ。 帰ってきた時、目の前に父親の死体があったら? その時の娘は? 泣き叫ぶんじゃないか? それとも、感情に身を任せて大量虐殺をするんじゃないか? そしたら、また僕は殺す事が出来る。 「最高じゃないか……じゃあ早く準備しようか」 魔法陣に聖水をかけながら僕はそう言った。 それでも勇者だろって? 勇者だから悪は滅ぼさなければいけないんだよ。 たとえ残虐な手段をしてもね……。
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