Disaster of Dragonute

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Disaster of Dragonute

ミックスワールドの文明レベルがまだ中世を抜け出せていないころ。  この世界で初めて覇権を握ったのはエルフでもドワーフでもない。  "ドラゴニュート"である。  もちろんドラゴンではなく、非常に大柄で強靭な体を持ち、太い尻尾と大きな翼を持つトカゲのような種族だ。  ドラゴニュートの平均身長は240cm前後、体重でいえば150kgほどある巨大な種族で、身体は茶色や青色といった硬い鱗に覆われている。  さらにその翼をはためかせ、数多く存在する種族の中で唯一、その身一つで飛ぶことができる種族でもある。  その筋力と体力、翼は彼らの誇りであり、実際他種族と比べるとまさに桁違いだった。  頭が切れるという話はほとんど聞かず、考えなしな奴らという話はありふれるほど聞く。つまり彼らの頭は少々足らなかったらしい。  しかし少々アホでも身体能力に優れていたドラゴニュートはそれだけで未開の地で木を切り倒すのも、狩りをするのも大得意。  他のどんな種族よりも早く領土を広げていった。  そしておそらく歴史上では初めて、世界で最大の領土を持つドラゴニュートの国、"大竜帝国"が建国された。  大竜帝国となったドラゴニュートたちの勢いはとどまることを知らず、さらに次々と領土を広げていく。  だんだんと未開拓地を広げていると、やがて国と呼ばれるほどの規模を持った種族とぶつかり合うことになる。  大竜帝国が初めて国境摩擦を経験した国は不幸にも"ハーフリング"の国だった。  ハーフリングは大柄なドラゴニュートとは対照的に非常に小柄な種族だった。  大人でも身長は130cm程度、体重は30kg程度と子供と見間違うような体格であり、足の速さや器用さが自慢の種族。  彼らは遊牧を繰り返し、やがてドラゴニュートの大竜帝国に遅れつつも広大な草原に"ワールドランナーズ"という国を構えていた。  山地や丘が多かった大竜帝国にとってワールドランナーズのどこまでも続く肥沃な草原はさぞ魅力的に見えたのだろう。  大竜帝国はワールドランナーズへ宣戦布告を行い、侵攻を開始したのだ。  この世界で初めての戦争、いや、虐殺がこの侵攻である。  ワールドランナーズは自らの土地を護るべく奮戦したが、ハーフリングとドラゴニュートではあまりに戦いへの適正に差が付きすぎていた。  ハーフリングは敏捷性にこそ優れていたものの、彼らの持つ刃渡り20~30cm程度の短剣や小型の弓程度ではドラゴニュートの造った鎧、そして生来の鱗にほとんど傷を付けられなかったのだ。  つまりはハーフリングが束になってかかろうとドラゴニュート1人殺すことができなかった。  それに引き換えドラゴニュートの戦斧や戦槌は大きいもので3m近い巨大な武器であり、群がるハーフリングを一撃でいとも簡単に叩き潰し、斬り飛ばし。オーバーキルも甚だしかった。  体格さ、それだけで歴戦でも天才でも何でもないただのドラゴニュートの一般兵であろうと、一騎当千の勢いでハーフリングを蹴散らしていった。  多少ハーフリングはその身軽さを生かしてドラゴニュートの単調な大振りを避けられることはできたが、自身の武器が効かないのであれば避けたところで逃げるか死ぬかの2択しかなく、ハーフリングに勝ち目はなかった。  さらにドラゴニュートたちは翼を生かして空からもハーフリングを攻めることができた。ナイフで一撃入れようとして肉薄したものの、ドラゴニュートたちにひっつかまれ、空から地面に叩き落されたハーフリングは少なくない。  自分の2倍以上の大きさの化け物が列をなしてこちらに向かい、自分の持つ武器はまったく効かず、我が物顔で空を飛びまわれ、まるで石ころを蹴り飛ばすように自分たちの家や櫓を一撃で粉々に破壊していく様を見たハーフリングたちの心境は想像に難くない。  ハーフリングは毒や夜襲による暗殺といった戦法を使い始めたが、ドラゴニュートは毒にも強い生命力を誇っており、夜襲も成功数は少なかったという。  この虐殺は非常に長期間の間続いた。一説には10年近くハーフリングは虐殺され続けたとか。  大竜帝国の野望をを止めてくれるような勢力も、勇者も10年間現れなかったのだ。  結局戦力はまともに戦力にならないままワールドランナーズは敗北を重ね、その領土と数を減らしていった。  この地獄は他種族がそしてハーフリングの惨状を知ったことによってようやく終わりを迎えることになる。  当時その他に建国された主要国はエルフたちで構成されていた"フォレスト・ネイション"とドワーフで構成されていた"ヘパイストス王国"。  この国は大竜帝国の周辺に位置する国でもあった。  この2国が大竜帝国とコンタクトを取り、戦争の終結を求めた。  断れば3か国を同時に相手することになりかねず、そうでなくても周囲全ての国からの心証が悪くなってはまずい、と考えた当時のドラゴニュートの皇帝はワールドランナーズからの撤兵を開始。  エルフとドワーフが仲裁に入り、ハーフリング-ドラゴニュート間で和平が結ばれた。  こうしてこの世界で初めての戦争は終わりを迎えたのである。  この戦争は後世で"ドラゴニュートの大災害"と呼ばれた。  そしてワールドランナーズのおよそ3分の1の領土をドラゴニュートに割譲すること、ハーフリング軍の完全解体、長期間の停戦などが含まれた和平交渉は、ここで初めて主要国の種族が出会ったことから"ミックスワールド条約"と呼ばれたのだった。  この条約が行われた都市を、ミックスワールドでは"統一歴0年"としている。  ドラゴニュートの災害によって草原に大きな荒廃を残していったドラゴニュートはワールドランナーズに大きな禍根を残していった。  ハーフリングは種族単位でドラゴニュートを激しく憎むようになり、その恨みは宇宙へ飛び出してもなお続いていく。  地球でいえば1500年前後の文明レベルで起きた出来事であった。
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