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【2】
ママたちのお茶会が終わり、ヒロとバイトの絵麻によって片付けも済んだ。
「つまり、追熟が足りなかったんだよ。だから甘みがなかった」
「へえ」
キッチンの隅、かぼちゃが床に並んでいる。絵麻は、それをしゃがみこんで観察していた。
「スーパーで売っているものは、熟してるかぼちゃなんだ」
「冷蔵庫に入れなくていいんですか?」
絵麻がヒロを見上げる。
「うん。丸ごとのかぼちゃはこうして冷暗所で保存するといいらしいよ。乾燥させてやることで、デンプンが糖になり甘みが増すんだ」
ヒロはかぼちゃをひとつ持ち上げる。
「種類により多少は違うけれど、だいたい収穫後四〜五十日ほど寝かせることで美味しさのピークがやってくる。皮やヘタの感じからすると、この西洋かぼちゃだけはもうイケるかも」
「かぼちゃを使った新メニューはどうでしょう?」
「実はそれ、考えていたんだよね。時間あるんだったら、桜田さん、試食してくれないかな」
「はい。ぜひ!」
絵麻はめいっぱいの笑顔になった。
(や、やった)
ヒロは、さり気なく誘えたぞ、と内心舞い上がる。
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