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「もう。店長はまだ物忘れなんて年じゃないですよー」
絵麻はいつもの調子に戻っていた。
(二百歳差だけどね)
ヒロは、かぼちゃを口に入れる。ホクホクして甘い。ちゃんと熟れていたようだ。
目の前を絵麻も、幸せそうに食事を続ける。
誰かの笑顔が見たくて自分はカフェをはじめたのではないか、ふと、ヒロはそんなことを思った。
魔法が使えないことに不便は感じないけれど、大事なことを忘れているようで気がかりだった。
絵麻とハリーとの日々はそれなりに充実している。思い出す必要はないのかもしれない。
「店長、ドフィノワ、秋の新メニューにしましょう。ぜったい人気出ますよ」
「桜田さんがそう言うなら」
絵麻の言葉に、俺って天才かも、と調子にのる単純なヒロだった。
それから二週間後、しっかり熟したかぼちゃはママたちの手に戻された。てんぷら、煮物、味噌汁、サラダなどなど、美味しい料理となり食卓に無事並んだようである。
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