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【2】
「ジングルベール、ジングルベール」
バイト大学生・桜田絵麻の歌声に目を開けたハリーは、ふかふかのベッドの中であくびをする。
(どいつもこいつも浮かれてるな)
店内にはツリーにリース、それからポインセチアの鉢が窓際に飾られている。控えめではあるが、クリスマス仕様だ。
「桜田さん、ケーキのデコレーション手伝って」
「はーい」
ヒロに呼ばれた絵麻は、客席のテーブルを拭き終えるとキッチンへ向かった。
(どうせチョコケーキは却下だろ)
毎年チョコケーキを希望するのに、ヒロが苺と生クリームのケーキしか用意してくれないのを思い出してハリーは不貞腐れた。
(……待てよ?)
ハリーは前足を腕組みするようにし、首を傾げる。
どうして定休日の今日、バイトの絵麻がカフェにいるのだろう。
はりきってケーキを作っているのは何故だ。
もしかして絵麻も、クリスマスパーティーに参加するのだろうか。
(チキンが二本しかないぞ)
ヒロがケーキを切り分けているうちにかぶりついてやろう、ハリーはチキンの争奪戦を頭に思い描いて闘志を燃やした。
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