66 もう少しだけ

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フラフラ歩いていると、目の前に高級車が止まった。 そして、ドアが開く。 「若、どちらに」 焦った男の声は運転席からだ。 「少し待っててくれ。 どうしたんだ、そんな悲しそうな顔をして。」 高そうな白いスーツ。 高そうな腕時計。 高そうな靴。 すべてが有名ブランドの一級品のものだ。あの車だってウン千万するだろう。 ブランドで固めているのに、何故かそのメガネだけは高級感を全く感じない。 【あ、あの・・】 「こい」 車の中に引っ張られた。 中は高級感があるソファー。 そしてワインセラーがある。 「飲みたいか?何本でも飲むといい。 持って帰ってくれても構わない。 イチ、イヌイヌランドに向かってくれないか」 「かしこまりました、若」 ミックスナッツが出された。 【・・・私が、見えてるんですね】 「この世に未練があるのだろう? 酒でないとしたら、金か?」 ドンっ 胸元のポケットからテーブルに置かれたのは、札束。 【・・・・】 「私は金持ちだ。理由を話してくれたら、望む額をあなたの家族に届けよう。」 メガネが妖しく光った。
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