66 もう少しだけ

8/15
117人が本棚に入れています
本棚に追加
/1176ページ
私は、イチや彼を置いて1人で歩いた。 『ちょっと待っててくれ』 と言って。 「・・・・」 「お金じゃ、解決出来ないこともあるみたいだねっ」 ! 声がした。 手品師がそこにいた。 「・・りーくんか。 はは、確かにそうだな。 私は、今最大の危機に面している。 ・・娘さんの成長した姿など、金では買えない。」 「叶えられるよっ。 俺なら。 ただし、条件がある。」 「金ならいくらでも」 「お金じゃないっ。 ・・キミのお父さんの形見。 あの革ジャン。 俺にくれないっ?」 「・・・。 それで、あの方を満足させられるのか?」 「うんっ。」 本当なら、渡したくない。 何にも変えがたいもの。 しかし。 私は一呼吸置いた。 そして声を出す。 「わかった、持っていけ。」
/1176ページ

最初のコメントを投稿しよう!