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金は。
すべての人間の口を開かせ、言うことを聞かせる。
私の最大の武器だった。
なのに。
風がピュウピュウ吹いている。
項垂れていると、上着をかけられた。
目の前に白いカップ。
「若、お風邪を召されます。どうぞ。
温かいコンソメスープです。」
「イチ・・すまない。」
一口飲むと、身体の芯からぽかぽか暖まった。
よくみると、さっきまでいた男が消えていた。
そうか。
願いを叶えたから。
後悔なく。
「若、ご用事は済まされたのですか?」
「ああ、・・帰るか。イチ。」
「はい。」
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